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2008年9月23日 (火)

セミの一生に見る良い死に方

もう夏も完全に過ぎ去ってしまいましたね。

昨日は有給休暇をとっていたので映画を見に行ったのですが、とうとうハーフパンツ・タンクトップ・サンダルでは出かけられませんでした。

もう9月も下旬ですもんね。早いものです。

思えばセミの声も聞こえてこなくなりました。

はい。セミのお話です。

 

よくセミの一生は「虚しい」とか「果かない」と表現されます。

地中で何年も生活して(種類・環境によって3~17年らしいです)、やっと地上に出たと思ったら1~2週間で死んでしまう。だから虚しいと。

でも本当にそうなのでしょうか。虚しいのでしょうか。

そもそも地中の生活がセミにとって苦痛なのか、本当に地上に出ることを待ち望んでいるのかという議論は置いといて、セミの一生を人間に置き換えても、この一生はけっこう幸せなんじゃないかと思います。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おぎゃ~!おぎゃ~!」

地上では雨がシトシトと降る季節。ある枯れ木の中で一つの新しい命が誕生しました。アブラゼミの子ども、ミンミンです。

すぐ近くには先に孵化していたお兄さんやお姉さんがいました。

「ここはどこだろう?」

生まれたばかりのミンミンはここがどこだか分かりません。

じっとしていられないミンミンは少しだけ見える明かりの方へ歩き出しました。

「うわっ!まぶしい!」

お母さんが開けた木の穴からやっと這い出したミンミンは、そこで初めての脱皮をします。

「この薄い皮邪魔だったんだよね」

すっきりしたミンミンは、ここではまぶしくてとてもいられないので、地中深くに潜ることにしました。

あたりには同じような穴がたくさんあります。どうやら仲間のみんなもすでに潜ったようです。

「おいしょ、おいしょ」

木の根に沿って穴を掘って、やっと光が全く届かないところまで来ました。

「よし、ここで生活をしよう」

ミンミンと仲間の地中生活はこうして始まりました。

 

「チュー、チュー・・・・・・っぷはー!あー、やっぱり杉の木の樹液は最高だな!」

3回の脱皮を経てすいぶん大きくなったミンミンは今日も元気に樹液をすすっていました。

もうミンミンも7歳です。

仲間や兄弟は、モグラに食べられたりバイ菌に冒されたりして半分くらいは死んでしまいました。

「まぁ地中も安全じゃないけど、鳥や人間がいる地上も危険だってよく聞くしな。それに地上はまぶしいんだ」

ミンミンは生まれた時にちょっと出た地上の記憶があったのです。だからミンミンは地中で天敵に怯えながらも幸せに暮らしていました。

そんなある日です。

「ん?何か体がモゾモゾするな。なんだろう?」

ミンミンの体に異変が起きました。どうやら4回目の脱皮のようです。

「い、いやだ~!早いよ!早いよ!俺にはまだ早いよ!!」

アブラゼミ村の掟によると、4回の脱皮をした幼虫は1ヶ月以内に村から出て行かなければなりません。

「うわ~!誰か!助けてください!!」

叫べども叫べども誰も助けてくれません。それがセミの運命だとみんな知っているのです。

やがてミンミンの背中が割れて、4回目の脱皮が終わりました。

「・・・・・・・・・」

その日のうちにミンミンは黙って村を出ました。

 

人間の子A「なぁ家でDSやろうぜ~!」

人間の子B「いいね!いいね!じゃあうちに行こ!」

人間の子A「うん!行こう行こう!」

季節はすっかり夏。夏休みに入った人間の子どもたちが楽しそうに遊んでいます。

「やっぱこえ~な~」

地上に小さな穴が1つ開いています。村を出たミンミンはすぐには地上に飛び出す決心がつかず、穴の中でグズグズしていました。

ハチや鳥がいなくなる夜にこっそり穴から出てはみるのですが、朝になると戻ってしまいます。

「やっぱりずっと穴の中で暮らして~よ~・・・」

それが許されないことであることはミンミンもよく分かっていました。

でもミンミンには勇気がありませんでした。

こうやってもう1週間が経ってしまったのです。

ところがこの日は違いました。

日が沈みかけた時、突然ミンミンはのそのそと穴から這い出たのです。

「・・・・・・・・・」

とにかく淡々と、何か作業をするかのように穴から這い出て、すぐ近くにあった木に登りだしました。

自分でも何故か分からないけど“そうしてしまう”。ミンミンの心境を説明するとすればこうなるでしょう。

ミンミンは羽化を始めました。スズメバチや鳥などの天敵が目を覚ます朝まで羽化を終えなければなりません。

ところがミンミンは冷静。淡々と羽化を終えました。

 

「いぃぃぃぃぃぃぃやっほぉぉぉう!!」

ミンミンは今日も元気よく空を飛び回っています。

羽化してからというもの、毎日毎日ビュンビュン空を飛んでいます。

人間の子に小便をひっかけるという趣味もできました。人間の家の網戸に張り付いて大声で鳴くといういやがらせも覚えました。

でもずっと土の中であまり動いていなかったのですぐに疲れてしまいます。

そんな時は木に掴まって休みます。でもとにかくテンションが上がってしまっているのでじっとはしていられません。

そんな時はミンミンミンミン鳴きます。

ミンミンはただテンションが高すぎて鳴いていただけなのですが、何故かメスがたくさん寄ってきました。

ここでも“あの”不思議なシステム”が作動します。自分でも何故か分からないけど、ミンミンはそれらのメスたちとたくさん交尾をしました。

飛んでは休み、休んでは鳴き、鳴いては交尾をしました。

ミンミンは毎日とても楽しそうです。

「あんなに眩しかった地上だけど、今は全然眩しくない!」

地中で思い描いた地上と今いる地上は必ずしも同じではなかったようです。

ミンミンは楽しくて仕方がありません。

地中にはなかった幸せがそこにはあったのです。

 

セミ子「あんた~~~~~!!!!死んじゃいや~~~!!!!」

病室に大きな泣き声が響き渡っています。

ベッドにはミンミンが静かに眠っています。

地上に這い出てから3日が経っていました。

セミ医者「羽の付け根がひどく損傷しておる。声帯も完全につぶれておるな。あと性器も・・・

羽化してから12日になるベテラン医師が言いました。

ミンミンは地上での生活が楽しすぎて普通のセミよりも早く最後の時も迎えることになってしまったのです。

セミ子は泣き続けました。ベテラン医師はどこか呆れ顔です。

「本望である」

ミンミンはニヤつきながら言いました。

セミ医者「そりゃそうじゃ!」

ベテラン医師がミンミンの頭をポカっと叩いてツッコミました。

それがとどめとなりミンミンは死にました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

あくまで地上の方が楽しいという人間の価値観に基づいて話を作ってみましたが、ミンミンは不幸な最期だったでしょうか。

幸せな時間が短いことは確かに不幸かもしれない。幸せな時間は多い方がいいにきまっています。

でも、それが人生の最後にくるのであれば話は別のような気がします。

幸せの絶頂の中で死ねる。そういう幸せもあるのではないでしょうか。

 

人間の人生を見てみると、セミと真逆の人生を送っている人も多いのではないでしょうか。

学生の頃は自由で何でもできて、彼女(彼氏)もたくさんできて楽しくて仕方がなかった。

これは羽化後のミンミンそのものです。

やがて就職してストレスをためる毎日。会社と家の往復。休日は家でゴロゴロ。引退後も特に趣味はなく、静かに暮らす日々。

これは地中でのミンミンです。

地上で元気よく飛び回り、人生最高の瞬間を味わった後で地中に潜っていく。これが人間の一生なのかもしれません。

 

もちろん今のは極端な言い方をしましたし、ずっと地上で飛び回っている人生の人も多いでしょう。

ただ僕が言いたいのは、セミの一生を虚しいとか果かないとか、僕ら人間如きがセミの一生をそんな浅はかに評価してんじゃねーぞってことなのです。

セミももしかしたら、人間の一生に対して同じことを言ってるかもしれませんよ。

こわいこわい。

 

 

ではまた。

 

 

●参考URL

Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%9F

 

 

↓vanilla sky「Distance」:いい曲です。

 

 

 

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