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2009年6月25日 (木)

迷子

Photo 昨日、僕は迷子になった。こんな事を言うと、またこいつは「僕は人生の迷子だ」とか言い出すに違いない、と思うだろうけど、全然違う。僕は実際に迷子になったのだ。物理的に、地理的に、迷子になったのだ。

 

昨日は朝からずっと会議だった。そしてその会議で使う資料作りのために、僕は連日残業をしていた。一昨日は3時間くらいしか寝ていなかった。これは僕にとっては致命的な状況だ。普段は少なくとも6時間は寝ている。だから僕は疲れていた。会議も疲れたし、それ以前の疲労も溜まっていた。その状態で、会議の後飲み会に行った。一次会、二次会と、僕は楽しくお酒を飲んだ。そして酔っ払った。二次会の記憶は、あまり残っていない。たぶん終電で、僕は最寄り駅に帰って来た。

昨日の朝はひどい雨だったから、普段なら駅まで自転車で行くところを、僕はバスで行っていた。でもそのことをすっかり忘れていた僕は、いつも通り駐輪場に向かった。駐輪場には当たり前のように僕の自転車はなかった。僕は混乱した。そして、「盗まれた」と思った。でもちゃんと「あ、今日はチャリで来てないわ」と思い至った。もうバスもないから、歩いて帰って、途中でタクシー拾えたら拾おうと思った。僕は歩き始めた。そして僕は、意識を失った。意識の喪失。

 

意識の回復。気が付いたとき、僕は歩いていた。そこは、全然知らない場所だった。見当もつかない場所だった。どうやら意識がないまま歩き続け、なぜか帰り道から外れてしまったらしかった。でも僕は酔っ払っていて気が大きくなっていたから、焦りはなかった。ただ、「ここは知らない場所だ」とは思った。でもとりあえず僕は歩き続けた。どの方角に向かっているのかさえ分からなかったけれど、とにかく歩いた。悪化した踵が痛かった。でも、歩かないわけにもいかなかった。歩いて、歩いた。真っ直ぐに進み、左へ曲がり、右へ曲がった。僕の歩きは報われた。やがて僕は、川に出ることができた。この川には見覚えがあった。僕の実家の近くを流れる、『野川』という川だ。この川を辿れば帰り道に出ることができる。僕は川を上流に向かって歩き始めた。足がとにかく痛かった。それでも歩き続けると、やがていつもの帰り道に出ることができた。なぜあんなところまで歩いて行ってしまったのか、僕にはまったく分からなかった。でも何にせよ、僕はいつも自転車で帰る道を、たらたらと歩いた。

途中で、あまりに疲れたから、もうバスが来ないバス停のベンチで寝た。足が痛かったし、眠かった。もう絶対家までたどり着けない、と思ったのだ。だから誰もいないバス停で寝るのは、当然だった。どれくらい寝たのかは分からない。僕は一度たりとも時計を見なかった。数分だとは思うが、もしかしたら数時間だったのかもしれない。とにかく僕は一度寝て、起きた。ちょうどその時、目の前にタクシーが止まった。中年男性がタクシーを降り、すぐさま僕はそのタクシーに乗り込んだ。これほどまでにタクシーをありがたいと思ったことはない。きっと、これからも、ない、だろう。運命的遭遇。

家の目の前までタクシーで行き、タクシーを降りた。降りるときに運転手のおじさんが、「ここ真っ直ぐ行けば(大通りに)出れるよね?」と聞いてきた。真っ直ぐ行けば大丈夫です、と僕は答えた。ドアを閉めると、タクシーは走り始めた。なぜかは分からないけれど、僕はそのタクシーを見つめていた。タクシーは、ほんの少しだけ真っ直ぐに行って、すぐに左折した。どの通りにもつながっていない、ただ住宅地に出るだけの道へタクシーは入っていった。感染的迷子。

 

 

ではまた。

 

☆★本日の英語★☆

Hey kid, where are you running off to?

~zebrahead『JAG OFF』~

《訳》よお、お前はどこへ行こうっていうんだよ?

 

 

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