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2009年7月 4日 (土)

網戸越しのカフカ

「カァ!カァ!」

「カァ!カァ!」

頭上から聞こえた鳴き声で僕は目を覚ました。カラスの鳴き声が珍しいわけではないけれど、やけに近い気がした。目は開けたが、まだ体は起こしていない。

また鳴き声がした。

「カァ!カァ!カァ!カァ!」

目が覚めているせいか、今度のはもっと鮮明に大きく聞こえた。鳴き声だけではなく、何かがガタガタ揺れていた。僕はびっくりして飛び起き、体を捻って声の方向を見た。そこには、口ばしを網戸に突き刺して羽をバタつかせているカラスがいた。どうやら僕はガラス戸を開けたまま寝ていたらしい。でもなぜカラスが網戸に突き刺さっているのだ?しかもカラスは、網戸から口ばしを抜こうと羽をバタつかせているようには見えない。むしろ、突き破ってこちら側に来ようとしているように見えた。僕は焦った。「なんだこの状況は」と思った。早く何とかしなければカラスがこちら側に来てしまう。僕はテーブルの上に置いてあったタウンページを手に取り、網戸越しにカラスをぶっ叩いた。ガシャーンという音と伴に、網戸が揺れ、突き刺さっていた口ばしは抜けてカラスはベランダに落ちた。興奮のあまり、僕の呼吸は荒い。「どうだこの野郎」などと思わないと、恐怖で震えてしまいそうだった。カラスは動かなかった。ピクリともしなかった。死んだはずはない。あんな程度で死ぬわけがない。たぶん気絶したのだろう。

僕は網戸を開け、恐る恐るカラスの両足を揃えて掴み、それを思い切りぶん投げた。カラスは胴体を中心に横回転しながら飛び、落ちた。「ドサ」っと音がした。僕は全てをなかったことにして、部屋に戻った。網戸が外れていないか確認して、体を部屋の中へ入れる。すると、背後からとてつもない数の鳴き声が聞こえてきた。

「カァ!カァ!カァ!カァ!カァ!カァ!」

振り返ると、本当にとてつもない数のカラスが上空からこちらに向かって飛んで来ていた。

「う、うわぁ!」

僕は自分でも情けないと思うほどの声を発し、急いで網戸を閉めた。「ガシャン!」という音を立てて網戸が閉まった。カラスは勢いをゆるめることなく突っ込んで来る。来る!僕はいつの間にか尻餅をついて、床にへたり込んでいた。6羽のカラスが、そのまま突っ込んできた。網戸に6つの口ばしが突き刺さった。突き刺さった状態で羽をバタバタさせ、「カァ!カァ!カァ!カァ!」と叫んでいた。羽の「バサっ!バサっ!」という音がこれほど恐怖に感じるとは。僕はその異常な光景をただどうすることもできずに見ていた。尋常じゃない量の汗をかいていることが分かる。声は出ない。ふと目線を落とすと、1羽のカラスがベランダを歩いていた。突っ込まずに着地したカラスがいたのだ。そしてよく見ると、網戸が少し開いている。勢いよく閉めたせいによる“はね返り”で、少し開いてしまっていたのだ。気づかなかった!そしてそのカラスはその隙間に向かって歩いている。ヤバい!閉めなければ!でも僕は動けなかった。カラスは異常なまでにゆっくりと歩いた。視線をずっとこちらに向けたまま、でも足は「隙間」に向かっていた。カラスはとうとう、その隙間に口ばしの先端を差し込んだ。網戸の上の方では6羽のカラスがバタついて網戸が揺れている。さっきよりも突き刺さった口ばしが深く入っているように見えた。下では1羽の賢明なカラスが今にも網戸を開けようとしている。もう口ばしの根元まで部屋の中に入っている。そして今にも網戸を横へスライドしようとしている。汗が止まらない。床についた手が接着剤でとめられてしまったように動かない。張り付いて取れないのだ。ヤバいヤバいヤバい!そしてついに、網戸が開いた。1羽のカラスが部屋に入ってきた。カラスは部屋に入ると、急に走り出し、僕目掛けて突進してきた。背後では6羽のカラスがギャーギャー騒いでいる。そして目の前のカラスは、僕の股間の前で足を止めた。そして頭を振り上げた。木こりが薪を割るときのように、野球のピッチャーが振りかぶるように、頭を振り上げた。嘘だろ?ヤバい!ヤバい!!ヤバい!!!何これ!何これ!!何これ!!!やめろ!やめろ!!やめろ!!!

カラスが口ばしを振り下ろした。

 

 

 

 

という夢をみた。

もちろんガラス戸は閉まっていたし、カラスは突き刺さっていなかったし、タウンページなんて部屋にはなかった。

ただ、遠くで聞こえたカラスの声にちょっとビクついた。

 

 

ではまた。

 

☆★本日の英語★☆

But after digging deeper, regret seems to be my downfall

~BETTER LUCK NEXT TIME『Start From Skratch』~

《訳》でも深く掘り下げてみると 後悔がこの状況を招いたんだと思う

 

 

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