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2009年12月 7日 (月)

杉山尚子『行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由』

を読んだ。

 

ヒトの行動の原因を明らかにしようという行動分析学についての新書だ。

これがかなり面白かった。目からウロコとはこのことだ。

僕たちは、自分の行動なのだから、その行動の理由(原因)は分かっているに決まっていると思うことが多い。たまに「なぜそんなことしたの?」の問いに答えられないこともあるが、大抵の場合は「~だから」と答えることができる。

でもこの「~だから」という答えが、実はその行動の理由(原因)になっていないことが多々あるようなのだ。この本を読んで、僕は妙に納得してしまった。

 

例えば、Aさんが水を飲むために「蛇口をひねる」という行動をするとする。さて、Aさんはなぜ蛇口をひねるのか。多くの人が「水を飲むために」とか「水が飲みたいから」と答えるだろう。実はどっちも不正解だ。

まず前者は理由(原因)になっていない。「水を飲むために」は目的だ。

それに対して「水が飲みたいから」というのは理由っぽくみえる。でも実はこれも理由ではない。っぽく見えるだけだ。「なぜなら~だから」という文脈でものを言えば何かの理由になると思ったら大間違いなのだ。

Aさんが蛇口をひねるのは、「水が飲めない状態があり、蛇口をひねることでと水が飲める状態になるから」だ。

「水が飲みたいから」というのはこの本で言うところの「こころ」の問題であって、行動の原因ではないのだ。

それに、いくら水が飲みたくても、もしその蛇口をいくらひねっても水が出てこないということが分かっていれば、蛇口はひねらない。

同じように、仕事をちゃんとやらないU君に対して、「Uはやる気がないから仕事をちゃんとやらないんだ」などと言ったところで、的外れもいいところなのである。「やる気がない」は“こころ”の問題で、行動の原因ではない。「仕事をちゃんとやらない」という行動(「仕事をやらない」は行動ではないが、「ちゃんと」が入れば行動のような気がするがどうだろう)に「やる気がない」というラベルを貼っているだけなのだ。

 

これはこの本で紹介されていることのほんの一部だ。ここでは紹介しきれないのであきらめる。例えばダイエットができない原因を追究したり、介護の現場における患者との関わりについての事例が載っていたりと、かなり実践的な内容だったと思う。

ただの学問ではない。誰にとっても役に立つ、使える学問だ。行動分析学。

 

ちなみに「行動」とは、「死人にはできないこと」だそうだ。

 

【目から鱗が落ちる<めからうろこがおちる>】

(新約聖書の使徒行伝から)あることをきっかけとして、急にものごとの真相や本質が分かるようになる。

~広辞苑より~

 

この本読んだら、本当に色々な行動の原因を捉えなおすことになると思う。

特に誰かの行動を評価する立場にある人は是非読んで欲しい一冊だ。

いくら説教をしても改善しない部下がいるとしたら、その説教が、その部下の行動の原因を正確に捉えられていないからかもしれない。

表面的に考えてはいけないのだよ、ワトソン君。

 

 

ではまた。

 

 

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コメント

>ハチ
この本はマジでお勧め!!

投稿: 上杉 | 2009年12月 7日 (月) 23時28分

こういう本大好きなので是非読もうと思います!

投稿: ハチ | 2009年12月 7日 (月) 22時56分

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