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2010年2月 3日 (水)

森口朗『いじめの構造』

を読みました。

 

この本はタイトルの通り、いじめについての本です。なぜいじめが起こるのか。いじめに対してどう対処するべきなのか、といったようなことが書いてある新書です。

めちゃくちゃいい本だと思います。教育者全員に読んで欲しいと思うほどです。

ここでは紹介し切れないほどたくさんの示唆がありました。

 

「どうせいじめはなくならない!」と嘆くのではなく、「いじめは悪だ!」と喚くだけでもなく、「いじめを見て見ぬ振りする奴も同罪だ!」と熱血漢を演じるでもなく、いじめというものを科学的に、学問的に、冷静に分析して“対処していこう”というのが主なメッセージだったと思います。

この作者は、いじめをなくそうとは思っていません。あくまで対処なのです。相手を死まで追い込むいじめはもちろん撲滅するべきですが、いじめ自体は学校に必要なものであると言っています。

なぜか。

それは、大人の社会にいじめがあるからです。大人の社会にいじめがある以上、子どもは大人になる前にいじめを経験しておく必要があるということです。これにはものすごく納得させられました。大人は、自分は誰かをいじめていたり、あるいはいじめが大人の社会に存在していることをはっきりと自覚しているにもかかわらず、学校にはいじめはあるべきではない、と言い切ります。子どもたちからしたら、自分のことを棚に上げてよく言うよ、ということになるでしょう。

僕たちはいじめと付き合っていかなくてはならないのです。なくならないのですから。だからこそ、ちゃんとした対処方法を知っていなければならないのです。例えば暴力に対しては、「いじめ」という言葉で隠さずにちゃんと刑事告訴するべきです。刑事告訴までいかないようなものであれば、教育委員会が加害者に出席停止を言い渡すべきです。

これが対処です。これでいじめがなくなるわけではありません。風邪を引いたら薬を飲むように、いじめがあったらそれに対する処方箋を出すわけです。

ところがいじめを根絶しようという人には、対処しようという意識が生まれにくいようです。「根」を「絶やす」ですから、目に見えないところにこれさえなくなればいじめはなくなる、というような一つの決定的な原因があると考えてしまうのだと思います。そういう人からすると、対処は実に表面的で意味がないと感じるのかもしれません。

しかしよく考えてみれば、世界はそういったもので溢れています。戦争とか飢餓とか不況とか、様々なトラブルをいつまでも根本解決できずに対処して生きているのが僕たちです。いじめだけは別だということはないんです。

 

さて、ここまで書いて僕がこの本の1%も説明できていないことが分かりました。この本にはもっとたくさん、もっと分かりやすく、色々なことが書いてあります。ちょっと攻撃的な文章も面白いです。

かなりのお勧めです。

 

これまで、いじめに言及してきた人達の多くは心優しき人達でした。それがいじめ現象の認識をあいまいにしてきたとすれば、残念でありません。有効な対策は、現実を直視することでしか生まれません。現実を直視するとは、子どもと同じ目線でこんな酷いことをされた、こんな酷いことを言われたと訴えることだけでは決してありません(それはそれで重要ですが)。

時にはクールに現実を分析するのも大人の責務です。

いじめにクラス内のステイタスが関係していることなど、誰もが判っていたはずです。しかし、ほとんどの人が、いじめ問題を理解する際にその要素に着目しませんでした。

人はみな平等であるという理想が現実を見誤らせた、というのは言いすぎでしょうか。

~森口朗『いじめの構造』より~

 

話は変わりますが、この森口朗さんはきっと、人から優しくないと思われている気がしてなりません。冷静に物事を見つめる人というのは、得てしてそう思われがちだと思います。表面的な人の方が体裁の整った発言をするので、多くの人からあの人は優しいと思われます。

でも僕は全然違うと思うのです。本当に人のことを考えているのはどちらか。そんなことは本当は明らかなはずです。表面的な言葉に騙されなければ。

森口朗さんは心優しい人だと、僕は思いました。

是非読んでみてください。

 

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ではまた。

 

 

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コメント

>森口さん
コメントありがとうございます。
ご本人からのコメントに焦りました。色々と勝手に書いてしまってすみません。
これからも書物拝見させていただきます。

投稿: 上杉 | 2010年3月 8日 (月) 20時09分

拙書への過分な評価、ありがとうございます。
実生活では、キャラをオブラートで包んで「優しい」と言われるよう努力しています。
しかし、ご指摘のとおり「冷静さ」がない人の方が人格的評価が高いという風潮はありますね。
日常生活ならともかく著作までそうというのは、少々「反知性主義」的な香りがします。

投稿: 森口朗 | 2010年3月 7日 (日) 23時21分

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