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2010年3月 7日 (日)

宮部みゆき『火車』

を読みました。

 

休職中の刑事のもとへ、その甥が「婚約者が失踪した」と相談を持ちかけられたことから事件が発覚し、真相に迫っていくお話です。

なかなかの大作ミステリーだったと思います。

中にはクレジットとかローンなどの金融市場の批判も含まれていて、ただのミステリーでなかったところがよかったです。

 

「(前略)あのね、蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってます?」

「脱皮っていうのは―――」

「皮を脱いでいくでしょ?あれ、命懸けなんですってね。すごいエネルギーが要るんでしょう。それでも、そんなことやってる。どうしてだかわかります?」

 本間よりも先に、保が答えた。「成長するためじゃないですか」

 富美恵は笑った。「いいえ、一生懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じてるからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね」

 べつにいいじゃないのね、足なんか生えてこなくても。蛇なんだからさ。立派に蛇なんだから。富美恵は呟いた。

「だけど、蛇は思ってるの。足があるほうがいい。足があるほうが幸せだって。そこまでが、あたしの亭主のご高説。で、そこから先はあたしの説なんだけど、この世の中には、足は欲しいけど、脱皮に疲れてしまったり、怠け者だったり、脱皮の仕方を知らない蛇は、いっぱいいるわけよ。そういう蛇に、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいるというわけ。そして、借金してもその鏡がほしいと思う蛇もいるんですよ」

~宮部みゆき『火車』より~

 

この部分を僕はとても気に入りました。この富美恵は、とても優しい人だなと思いました。こういう人が、もっといてくれたらいいのになぁと。

成長成長成長成長・・・。そんなこと口に出す言葉でも、他人に強要するものでもないのに、人は自分の苦しみを人にも味わわせないと気がすまない生き物だから、成長しようとする人は、それに伴う苦しみ故に、人にも成長を強要します。

そして言うのです。

「成長しない奴は死ね」と。

そしてその例えとして、「蛇は脱皮をしないと死ぬ」と言うのです。

なーんで恐ろしいのでしょう。

 

この小説は、会社の取引先の人に良いと言われて読んでみましたが、全体的にはそれほど面白くはなかったです。どうやら宮部みゆきは僕の好みではないということが分りました。以前読んだ『蒲生邸事件』もあまり好きではなかったですし・・・。

まぁ世間が良いというものでも、必ずしも自分が好きになるとは限らないということですね。逆もまた然りで。

 

ただ、アメリカの金融資本主義の破綻があったように、金貸しビジネスへの批判がある今日において、この小説は読む価値があるなと思いました。

「借金で苦しむのは計画性がないからだ」とか、「お前が作った借金はお前の問題だ。お前さえしっかりしていれば、借金なんて作らずにすんだ。自己責任だ」などと軽はずみに問題の原因を個人に押し付けるような人には、一度読んで欲しい小説です。

 

火車 火車

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ではまた。

 

 

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