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2010年3月20日 (土)

垣根涼介『借金取りの王子 君たちに明日はない2』

を読みました。

 

これは『君たちに明日はない』という、リストラ請負を事業とする会社で働く男が主人公の小説の、第2弾です。

正直『君たちに明日はない』自体はそれほど面白くはなかったのですが、好きな垣根涼介の作品なので読んでおこうと思って読みました。

感想は、まぁ前作と同じような感じで、“まぁまぁ”といったところです。

でも会社員の僕としては、世の中にはどのような人がどのような思いや境遇で働いているのかを考える機会になったので良かったかなと思います。あと、この本は短編がいくつか集まっているというスタイルなのですが、そのどれもが基本的にはハッピーな感じで終わるのは良かったです。リストラされるにしても、されないにしても、価値観を改めて新しい世界が開けたり、全く違う人生を歩んでみたり、結末は色々ありましたが、どれもハッピーでした。

やっぱり小説はハッピーが一番です。

「ハッピーエンドなんて面白くも何ともねぇ!」などと考えていた高校から大学までの僕は、きっと頭がおかしかったのでしょうね。まぁ今も十分頭おかしいですけど。

 

では最後に、折り目をつけたページを紹介します。

これはリストラ候補に挙がっている中年男性社員(一彦)が、出世頭の同期(山口)とお酒の席で「会社をやめるな」と説得されるシーンです。

 

「出世なんて、しょせんはオセロと同じだ。ある一時の局面では優位になったとしても、ほんのちょっとした油断やミスから、瞬く間に盤の目はひっくり返る。勝っていたと思っている状況からひっくり返されるから、より悲惨だ。カッコもつかない」

 分かる。山口は今、自身の状況を分かり易く例えている。

「逆に今、不利な状況に立っていても、何かの拍子にふたたび目をひっくり返せることだってある」

 今度は、自分のことだと思う。

「でも、だからこそ会社の中で、利害を別にした親しい人間が必要なんだと思う。自分がもし苦しくなったとき、しょうもない馬鹿話をして笑えるような奴らがいないと、人間、やがては駄目になっちまう。余裕もなくす」

 そう言ったあと、ふたたび一彦の顔を見上げた。

「だから、辞めるな。分かるな?」

~垣根涼介『借金取りの王子(File2.女難の相)』より~』

 

このシーンの何がいいって、山口は「俺のために残ってくれ」と説得している点です。「お前がいなくなったら馬鹿話をする相手がいなくなって、俺が困る」というのですから。「やめたら損をする」とか「収入はどうする」とか、理屈による説得じゃないところが好きです。

あと、馬鹿話ができる相手の重要さについても共感できます。これは本当に大事なことだと思います。僕も会社の中には馬鹿話ができる相手がいますが、同じ課には正直いないです。周りの人はほとんどが女の人なので、やっぱり違うんですよね。男と女が違う生き物である以上、これは仕方のないことです。上司は男の人で、色々なことをぶっちゃけられるのですが、やっぱり上司と部下という関係なので普段から馬鹿話ができるということにはなりません。だからこの山口が一彦を引き止める気持ちは分かりますね。

馬鹿話超大事。馬鹿になれるっていうのは幸せなことです。

 

さて次はどの垣根涼介作品を読もうかな。

 

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ではまた。

 

 

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