« 本屋大賞2011ノミネート作品 | トップページ | 山下貴光『少年鉄人』 »

2011年2月 5日 (土)

インフルエンザかかりました

今週はずっと、どうも体調がよくなかった。月曜日は午前中から寒気がしていたし体がだるかった。でも日曜日に多少ビールを飲んでいたから、そのせいで体調が悪いんだと思っていた。実際その日は、夜になると体調は回復していた。

翌日の火曜日は、逆に夜までは体調に異変はなかった。ところが19時くらいから急に咳が出始め、寒気も感じ始めた。さすがに「これは風邪だな」とは思った。しかもよりによってその日は飲み会だった。一応僕が設定したものだったし、それを楽しみにしてくれている人もいたし、それに僕は翌日は有給休暇を取得していたから、飲み会を欠席しようとは思わなかった。

予定通り20時に会社を出て飲みに出かけた。飲み会の最中は特に咳も出なかったはずだし、寒気を感じることもなかったと思う。家に帰ってからも、特にだるさなどを感じることはなかった。風邪のことはすっかり忘れてしまった。

そして水曜日だ。朝からどうにも体がだるかった。寝ていても分かる全身の関節の痛み。軽い頭痛。もう体全体がだるかった。

しかしまだ、ただの風邪だと思っていた。風邪に前日のアルコールの影響が合わさってだるいんだろうと。だから予定通りに出かけようとしていた。

ところが何だかんだでうだうだしていると、体はますますだるくなっていった。節々の痛みはどんどん重くなり、頭はぼーっとしてきた。結局出かけることはあきらめて、とりあえず昼食と夕食を買いにコンビニにだけ出かけて寝ていることにした。

夕方くらいになると体調は決定的に悪くなっていた。もう発熱を疑う余地はなかった。しかし正確な体温を確かめる術はない。うちには体温計がないからだ。でも体温計がなければ体温が分からないなんて馬鹿な話があるわけがなく、僕は発熱を確信していた。だって節々痛いんだもの!だから夕食を食べて常備薬の風邪薬を飲んだ後は、じっと寝ていた。熱のせいでうまく寝れなかったが、翌日は会社に行かなければならなかった。ただでさえ大事な仕事がある日だったし、有給休暇取得日の翌日だったし。だから僕はもう、必死で寝た。

うんうん唸りながら何とか眠りにつき、朝目が覚めた。はっきりいって全身の痛み、つまりは熱っぽさは取れていなかったが、頭はだいぶすっきりしているように思えた。これは後から思えば“朝だから”だったのだが、僕は一度は会社に行こうと思った。そしてそう思って体を起こしてみると、すぐさま僕は「あぁダメだ」と思った。起きれるには起きれるが、これで働けるとは思わなかった。僕はすぐさまひ弱な僕を諦めて改めて布団に入って震えた。一度布団から出ると、寒さが止まらないからたまらなかった。目覚ましを、誰かが出社しているであろう8時50分にセットして眠りについた。

そこから寝たかどうかは分からない。ただ予定通りに8時50分に再び起き、会社に電話をし、欠勤する旨伝えた。どうやら有給休暇中にすでに僕のせいで迷惑をかけていた部分があったようで、ただでさえ申し訳なかった上にその日も休まなければならず、もう僕はどうしようかと思い、病院に行こうと思った。

普段は風邪で病院には行かない。でもいつもとは違う感じはもっていたし、会社への申し訳もたたなかったからだ。熱が二日に渡る風邪なんて、滅多にない。情けないことにここで初めて僕は、可能性としてのインフルエンザに思い至る。どこか、インフルエンザなんて僕の知らないところで勝手に流行って勝手に死んでいくものだと思ってた。だから会社で予防注射が受けられると知っても受けようとは微塵も思わなかったし、発熱に気づいた時もその可能性を考えもしなかった。馬鹿だ。何の根拠もなくやればできると思ってる中学生みたいだ。

その後、その日に絶対やらなければならなかった仕事をお願いをするメールを打ち、インターネットで病院を調べた。僕が知る限り一番近くにあった病院がよりによって定休日で、他に病院が思い当らなかったから探さなければならなかった。

するとわりと近くにあって助かった。自転車で7分ほど走り病院につくと、幸運なことにそこに待っている患者は僕を覗いて3人しかいなかった。病院は混んでいる所、というイメージがあったからうれしかった。

受付で保険証を出し、問診票と体温計を受けとって椅子に座った。体温を測りながら問診票を記入した。体温は38.7度だった。「げっ、朝のこの状態でこの体温かよ」と思った。一体昨夜は何度まで上がってたんだよ馬鹿野郎、と思った。問診票と体温計を受け付けに提出し、椅子に戻って待った。

他の患者さんはお年寄りばかりだった。マスクを付けているのは僕一人だった。病院とは不思議なところだ。みんな病気を治しに来ているのに、もしかしたら僕から病気をもらってしまうかもしれないのだから。「みんなマスクした方がいいよ」とは、だからといって言えなかった。看護士さんもお医者さんも、大変なリスクを背負って仕事してるんだな。

やがて診察室へ通された。「上杉さん、診察室2番へどうぞ~。急いで~」という馴れ馴れしい呼び出しだった。診察室へ入ると、ピンク色のナース服に紺色のカーディガンを羽織り、四角い黒淵のメガネをかけた看護士がいた。鋭い目が僕を威圧するように睨んでいた(ように思えた)。推定年齢55歳。僕は彼女を鬼婦長と名づけることにした。

医師の前の椅子に座り何度か質問に答えると、すぐにインフルエンザの検査をすることになった。鬼婦長が、「どうぞこちらへ」と言ってドアを開けた。「どこに行くんですか?」と言うと「ちょっと鬼が島まで」と言われそうだったので黙って部屋を出た。連れて行かれたのは鬼が島ではなく隣の部屋。ベッドが3つほど並べられており、それぞれがカーテンで仕切られていた。鬼婦長は一番奥のベッドへ行くよう僕に指示し、「おたくはもういいから出て」と言った。すると鬼婦長が指差していたカーテンの向こうから、一人の少年が現れた。高校生くらいだったろうか。彼は一言、はい、と言って部屋を出た。「おい、どこ食われた!?少年!」と言いたかったが言えなかった。僕も一応病人だ。メンタルが弱っていたのだ。鬼はこうやって弱った獲物を食うのだろうか。

僕は彼がさっきまでいたベッドに腰掛けた。僕の脇に立った鬼婦長の手には棍棒ではなく、鋭利な半透明の物体が握られていた。「鼻水出る?」と鬼婦長が言い、「あまり出ません」と僕が答えた。「じゃあ、マスクをしたままどちらかの鼻から鼻水を出してみて。マスクにつかないようにね」と、さも誰でもやったことがある課題を与えるような言い方をしてきたので、僕は口答えも質問もせずにトライした。右の穴からは出ず、左でやってみたら案外いい感じで鼻水が出た。すると鬼婦長は「とらえた!」と言ったか言わなかったかは覚えていないが、僕のマスクを外して僕の左の鼻の穴に手に持っていた凶器を差し込んだ。痛かった。思わず顔をしかめてしまった。

鬼婦長はその鋭利な凶器を抜くと、ちょっと待ってて、と言って部屋を出て行った。僕は左の穴からちょっとだけ飛び出した鼻水を、近くにあったボックスティッシュを拝借してふき取り、ごみ箱は見当たらなかったのでポケットに突っ込んだ。下手にごみ箱を要求して鬼に食われるよりは百倍マシという判断だった。

10分後、再び診察室に呼ばれた。僕は急いで診察室へ向かった。部屋に入って椅子に座るなり、「陽性だね。A型」と言われた。「A型は新型ですか?」と聞こうと思ったが、インフルエンザと診断されたのが思ったよりもショックで何も聞けなかった。会社に連絡してだとか、熱が下がっても二日間は外出禁止だとか、周りに配慮してだとか、そういう説明だけを聞いて診察室を出た。

受付で診察代を払う時に看護士からまた「周りに配慮してくださいね」と言われたので思わず謝った。病院に来てすみません。

帰りに薬局で処方されたタミフルと解熱剤を買い、コンビニで食料と水分をまとめ買いし、アパートに入る前にその日会ったすべての人に「ウイルスまき散らしてすみません」とまとめて謝った。

 

それから解熱剤を飲んで熱が下がったり、解熱剤が切れて熱が上がったりを繰り返して、発症から4日目の今日、やっと解熱剤なしで36度台の体温をキープできるまで回復した。そして調子に乗ってこんな長文を書いてしまった。まだ咳は出るし喉は痛いというのに・・・。

どうせ明日までは外出禁止だ。しかし食料が切れた。どうやらまた、「生きててすみません」と言いながらコンビニに行くしかなさそうだ。

 

インフルエンザ。意外としぶといから注意。

お大事に、これからかかる人。

 

 

ではまた。

 

 

|

« 本屋大賞2011ノミネート作品 | トップページ | 山下貴光『少年鉄人』 »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/146160/38749526

この記事へのトラックバック一覧です: インフルエンザかかりました:

« 本屋大賞2011ノミネート作品 | トップページ | 山下貴光『少年鉄人』 »